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大住緑栄のよもやま話~第16回~

皆さんこんにちは!

株式会社大住緑栄、更新担当の中西です。

 

~経済的役割~

 


林業における経済的役割とは

“森”が動かす、持続可能な地域と日本経済のエンジン

林業は、単なる「木を伐る産業」ではありません。木材の供給を通じてあらゆる産業に関与し、さらに近年では、再生可能エネルギー、カーボンクレジット、観光、医療福祉分野などとも結びつき、多面的に経済を支える“静かな基幹産業”となっています。本記事では、林業が果たす経済的役割を、5つの視点から深く掘り下げて解説します。


1. 木材供給による産業連携と波及効果

木材は、建築資材、家具、紙、燃料などに使用される、汎用性の高い再生可能資源です。林業が安定して木材を供給することは、多くの産業に対して以下のような効果をもたらします。

  • 建設業界:構造材・内装材・合板・断熱材として必須

  • 製造業・インテリア業界:木工製品、建具、デザイン家具など

  • 紙・パルプ業界:新聞・雑誌・段ボール・ティッシュなどの原料

  • バイオマス発電業界:未利用材や間伐材の燃料化により発電事業を支援

これらの業種と連携することで、林業は建設・製造・流通といった広範な経済活動の“川上”を担う存在として、重要な役割を果たしています。


2. 地域経済の支柱としての役割

林業は多くの場合、山間部や中山間地域に立地しており、過疎地域の産業基盤となっています。

  • 地元の雇用創出(伐採・運搬・造林・選木・管理など)

  • 林業を軸とした建築業・土木業・木工業への波及

  • 地元資源の地元活用(地産地消の木材・熱利用)

  • 地域通貨や森林サービス業などの新たな経済循環の起点

特に都市部への依存度が高い日本の中で、林業は“地方の内発的な経済活動”を支える貴重な産業です。


3. 脱炭素経済への貢献

森林はCO₂の吸収源であり、木材製品はその炭素を長期間にわたって固定することができます。林業を通じて適切な森林管理と木材利用が行われることで、以下のような効果が生まれます。

  • 森林吸収量の増大(間伐による光合成効率向上)

  • 木材製品による炭素貯蔵(長寿命の建築材など)

  • 再エネ資源としての木質バイオマスの活用(化石燃料代替)

  • カーボンクレジット制度への貢献(国内外での排出権取引)

これらは日本政府が推進する「グリーントランスフォーメーション(GX)」の柱でもあり、林業はその現場を担う実行部隊として、グリーン経済の根幹を支えています


4. 森林資源の“多面的機能”を経済に還元

森林は木材以外にも、治水・保水・生物多様性・景観形成・防災などのさまざまな公益機能を持っています。近年では、これらの機能も「経済価値」として捉えられるようになってきました。

  • 観光資源としての価値(森林セラピー、森林浴ツアーなど)

  • 防災コストの抑制(土砂災害・流木被害の防止)

  • 福祉・教育分野への応用(高齢者就労、木育、環境教育)

これらの機能を活用することで、林業は単なる1次産業ではなく、公共投資の削減やサービス産業の活性化にも寄与する“横断的産業”として評価されています。


5. 持続可能な資源経済の象徴産業として

森林は、適切に管理すれば永続的に資源を生み出すことができる数少ない存在です。この特性は、消費と再生のバランスが求められる持続可能な経済(サーキュラーエコノミー)において極めて重要です。

  • 50年〜70年という長期的生産サイクルの中で、計画的に伐採と再造林を繰り返す

  • 「育てて、使って、また植える」という循環型の経済モデル

  • 地域単位での資源・エネルギーの自給自足を支える軸に

このように、林業は資本主義の中でも“時間”と“自然”を尊重する経済モデルとして、持続可能な社会の象徴的存在となりつつあります。


静かな基幹産業、林業の再評価を

林業は見た目に派手な産業ではありません。しかし、その経済的役割は驚くほど多面的で、地域の持続性・脱炭素経済・多産業との連携を支える、極めて重要な存在です。

  • 産業の川上として他分野を支える

  • 地方創生の起点として雇用を生み出す

  • 脱炭素社会を実現する鍵となる

  • 公益性を経済価値に変換できる

  • 循環経済の象徴として世界から注目される

これからの時代、林業の再評価と再設計は、日本の経済そのものの持続可能性を左右する重要なテーマになるはずです。

 

 

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