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月別アーカイブ: 2025年7月

大住緑栄のよもやま話~第16回~

皆さんこんにちは!

株式会社大住緑栄、更新担当の中西です。

 

~経済的役割~

 


林業における経済的役割とは

“森”が動かす、持続可能な地域と日本経済のエンジン

林業は、単なる「木を伐る産業」ではありません。木材の供給を通じてあらゆる産業に関与し、さらに近年では、再生可能エネルギー、カーボンクレジット、観光、医療福祉分野などとも結びつき、多面的に経済を支える“静かな基幹産業”となっています。本記事では、林業が果たす経済的役割を、5つの視点から深く掘り下げて解説します。


1. 木材供給による産業連携と波及効果

木材は、建築資材、家具、紙、燃料などに使用される、汎用性の高い再生可能資源です。林業が安定して木材を供給することは、多くの産業に対して以下のような効果をもたらします。

  • 建設業界:構造材・内装材・合板・断熱材として必須

  • 製造業・インテリア業界:木工製品、建具、デザイン家具など

  • 紙・パルプ業界:新聞・雑誌・段ボール・ティッシュなどの原料

  • バイオマス発電業界:未利用材や間伐材の燃料化により発電事業を支援

これらの業種と連携することで、林業は建設・製造・流通といった広範な経済活動の“川上”を担う存在として、重要な役割を果たしています。


2. 地域経済の支柱としての役割

林業は多くの場合、山間部や中山間地域に立地しており、過疎地域の産業基盤となっています。

  • 地元の雇用創出(伐採・運搬・造林・選木・管理など)

  • 林業を軸とした建築業・土木業・木工業への波及

  • 地元資源の地元活用(地産地消の木材・熱利用)

  • 地域通貨や森林サービス業などの新たな経済循環の起点

特に都市部への依存度が高い日本の中で、林業は“地方の内発的な経済活動”を支える貴重な産業です。


3. 脱炭素経済への貢献

森林はCO₂の吸収源であり、木材製品はその炭素を長期間にわたって固定することができます。林業を通じて適切な森林管理と木材利用が行われることで、以下のような効果が生まれます。

  • 森林吸収量の増大(間伐による光合成効率向上)

  • 木材製品による炭素貯蔵(長寿命の建築材など)

  • 再エネ資源としての木質バイオマスの活用(化石燃料代替)

  • カーボンクレジット制度への貢献(国内外での排出権取引)

これらは日本政府が推進する「グリーントランスフォーメーション(GX)」の柱でもあり、林業はその現場を担う実行部隊として、グリーン経済の根幹を支えています


4. 森林資源の“多面的機能”を経済に還元

森林は木材以外にも、治水・保水・生物多様性・景観形成・防災などのさまざまな公益機能を持っています。近年では、これらの機能も「経済価値」として捉えられるようになってきました。

  • 観光資源としての価値(森林セラピー、森林浴ツアーなど)

  • 防災コストの抑制(土砂災害・流木被害の防止)

  • 福祉・教育分野への応用(高齢者就労、木育、環境教育)

これらの機能を活用することで、林業は単なる1次産業ではなく、公共投資の削減やサービス産業の活性化にも寄与する“横断的産業”として評価されています。


5. 持続可能な資源経済の象徴産業として

森林は、適切に管理すれば永続的に資源を生み出すことができる数少ない存在です。この特性は、消費と再生のバランスが求められる持続可能な経済(サーキュラーエコノミー)において極めて重要です。

  • 50年〜70年という長期的生産サイクルの中で、計画的に伐採と再造林を繰り返す

  • 「育てて、使って、また植える」という循環型の経済モデル

  • 地域単位での資源・エネルギーの自給自足を支える軸に

このように、林業は資本主義の中でも“時間”と“自然”を尊重する経済モデルとして、持続可能な社会の象徴的存在となりつつあります。


静かな基幹産業、林業の再評価を

林業は見た目に派手な産業ではありません。しかし、その経済的役割は驚くほど多面的で、地域の持続性・脱炭素経済・多産業との連携を支える、極めて重要な存在です。

  • 産業の川上として他分野を支える

  • 地方創生の起点として雇用を生み出す

  • 脱炭素社会を実現する鍵となる

  • 公益性を経済価値に変換できる

  • 循環経済の象徴として世界から注目される

これからの時代、林業の再評価と再設計は、日本の経済そのものの持続可能性を左右する重要なテーマになるはずです。

 

 

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大住緑栄のよもやま話~第15回~

皆さんこんにちは!

株式会社大住緑栄、更新担当の中西です。

 

~多様化~

 

かつて林業は 「木材の生産=伐採と搬出」 が主役でした。しかし気候変動、人口減少、ライフスタイルの変化が進むいま、森に求められる価値は多層化し、林業そのものも大きく姿を変えつつあります。本稿では “多様化” をキーワードに、現代林業がどのようにビジネスモデル・担い手・技術・社会的役割を拡げているのかを深掘りします。


1. 収益源の多様化:木材以外の「森の恵み」

領域 具体例 ポイント
非木材林産物(NTFPs) 山菜・きのこ・樹液・蜂蜜・薪炭 小規模でも高付加価値。ブランド化や体験商品と相性◎
バイオマス発電燃料 間伐材・林地残材チップ 荒廃森林の整備と再エネ需要を同時に解決
カーボンクレジット J-クレジット、森林吸収量取引 追加伐採抑制・長伐期化を経済インセンティブに転換
エコツーリズム 森林セラピー、林業体験、ネイチャーガイド サービス業と連携して地域経済の新しい柱に

ポイント:木材価格の変動リスクを複数の収益チャネルで平準化し、森を「多面的に活かす」経営へ。


2. 技術の多様化:デジタルとロボティクスが森に入る

  1. スマート林業(ICT・ドローン・GIS)

    • 高精度レーザー(LiDAR)で立木1本単位の材積・樹種を自動解析

    • 作業道設計を3Dシミュレーション → 路網コストと環境負荷を最適化

  2. 高性能林業機械の小型化

    • ハーベスタ・フォワーダのコンパクトモデル普及で、中小林家も導入可能

    • 遠隔操作型プロセッサで危険作業を低減

  3. バイオ・素材イノベーション

    • CLT、セルロースナノファイバー(CNF)、木質プラスチックが新市場を創出

    • “木材=建材”の枠を超え、化粧品・自動車部材・電子部品へ

ポイント:ICT・機械化は労働力不足を補い、山林の“見える化”で投資判断のスピードを上げる。


3. 担い手の多様化:林業×〇〇 で広がる職域

タイプ 具体的な働き方 期待される効果
兼業林家 週末に間伐・伐採、都市部在住者の山持ち 荒廃森林の手入れ/所得補完
ベンチャー&スタートアップ ドローンサーベイ、材積AI、森林アプリ 産業のDX・新サービス開発
地域おこし協力隊 森林整備+観光企画+教育プログラム 関係人口拡大・移住促進
グリーンジョブ研修生 元IT・建設技術者の転職 安全管理・機械操作スキルの流入

ポイント:多様な人材が入ることで、林業がもつ「一次・二次・三次産業融合」の強みを引き出す。


4. 経営モデルの多様化:シェアリングとアライアンス

● 森林シェアリング

*規模の小さい山林を集約*し、共同施業団地として路網・機械をシェア → 施業コストを30%以上削減した事例も。

● 地域エネルギー連携

バイオマス発電・チップボイラーを行政/福祉施設と共同運営。熱利用で売電より高い収益を確保するモデルが増加。

● 林業×建築の垂直統合

林業会社がプレカット工場・建設業を内製化し、川上から川下まで一気通貫で工期短縮&高付加価値化


5. 社会的役割の多様化:カーボンニュートラルと地域防災

  1. 気候変動対策

    • 森林吸収源+木材利用拡大で“カーボンストック”を最大化

    • 長伐期施業や伐採後の再造林義務化でCO₂排出を抑制

  2. グリーンインフラ

    • 森林整備による土砂災害・流木被害の軽減

    • 保水機能で河川氾濫リスクを緩和し、社会コストを削減

  3. 地域福祉・教育

    • 森林療法、木育プログラムで健康増進と感性教育

    • 高齢者の就業・交流の場として「森の作業」が注目


多様化する林業は「森林総合産業」へ

  • 木材生産だけではなく エネルギー・資源循環・観光・健康・環境保全 を包含

  • デジタル技術とアライアンスで 小規模でも持続可能なビジネスモデル を構築

  • 林業×他産業 の掛け算が、地方創生と脱炭素社会のキードライバーに

21世紀の林業は、“伐る”だけではなく 「森をデザインし、多様な価値を収穫する産業」 へと変貌しています。森の可能性に挑戦するプレーヤーこそ、これからのグリーンエコノミーを牽引する存在なのです。

 

 

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