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大住緑栄のよもやま話~第15回~

皆さんこんにちは!

株式会社大住緑栄、更新担当の中西です。

 

~多様化~

 

かつて林業は 「木材の生産=伐採と搬出」 が主役でした。しかし気候変動、人口減少、ライフスタイルの変化が進むいま、森に求められる価値は多層化し、林業そのものも大きく姿を変えつつあります。本稿では “多様化” をキーワードに、現代林業がどのようにビジネスモデル・担い手・技術・社会的役割を拡げているのかを深掘りします。


1. 収益源の多様化:木材以外の「森の恵み」

領域 具体例 ポイント
非木材林産物(NTFPs) 山菜・きのこ・樹液・蜂蜜・薪炭 小規模でも高付加価値。ブランド化や体験商品と相性◎
バイオマス発電燃料 間伐材・林地残材チップ 荒廃森林の整備と再エネ需要を同時に解決
カーボンクレジット J-クレジット、森林吸収量取引 追加伐採抑制・長伐期化を経済インセンティブに転換
エコツーリズム 森林セラピー、林業体験、ネイチャーガイド サービス業と連携して地域経済の新しい柱に

ポイント:木材価格の変動リスクを複数の収益チャネルで平準化し、森を「多面的に活かす」経営へ。


2. 技術の多様化:デジタルとロボティクスが森に入る

  1. スマート林業(ICT・ドローン・GIS)

    • 高精度レーザー(LiDAR)で立木1本単位の材積・樹種を自動解析

    • 作業道設計を3Dシミュレーション → 路網コストと環境負荷を最適化

  2. 高性能林業機械の小型化

    • ハーベスタ・フォワーダのコンパクトモデル普及で、中小林家も導入可能

    • 遠隔操作型プロセッサで危険作業を低減

  3. バイオ・素材イノベーション

    • CLT、セルロースナノファイバー(CNF)、木質プラスチックが新市場を創出

    • “木材=建材”の枠を超え、化粧品・自動車部材・電子部品へ

ポイント:ICT・機械化は労働力不足を補い、山林の“見える化”で投資判断のスピードを上げる。


3. 担い手の多様化:林業×〇〇 で広がる職域

タイプ 具体的な働き方 期待される効果
兼業林家 週末に間伐・伐採、都市部在住者の山持ち 荒廃森林の手入れ/所得補完
ベンチャー&スタートアップ ドローンサーベイ、材積AI、森林アプリ 産業のDX・新サービス開発
地域おこし協力隊 森林整備+観光企画+教育プログラム 関係人口拡大・移住促進
グリーンジョブ研修生 元IT・建設技術者の転職 安全管理・機械操作スキルの流入

ポイント:多様な人材が入ることで、林業がもつ「一次・二次・三次産業融合」の強みを引き出す。


4. 経営モデルの多様化:シェアリングとアライアンス

● 森林シェアリング

*規模の小さい山林を集約*し、共同施業団地として路網・機械をシェア → 施業コストを30%以上削減した事例も。

● 地域エネルギー連携

バイオマス発電・チップボイラーを行政/福祉施設と共同運営。熱利用で売電より高い収益を確保するモデルが増加。

● 林業×建築の垂直統合

林業会社がプレカット工場・建設業を内製化し、川上から川下まで一気通貫で工期短縮&高付加価値化


5. 社会的役割の多様化:カーボンニュートラルと地域防災

  1. 気候変動対策

    • 森林吸収源+木材利用拡大で“カーボンストック”を最大化

    • 長伐期施業や伐採後の再造林義務化でCO₂排出を抑制

  2. グリーンインフラ

    • 森林整備による土砂災害・流木被害の軽減

    • 保水機能で河川氾濫リスクを緩和し、社会コストを削減

  3. 地域福祉・教育

    • 森林療法、木育プログラムで健康増進と感性教育

    • 高齢者の就業・交流の場として「森の作業」が注目


多様化する林業は「森林総合産業」へ

  • 木材生産だけではなく エネルギー・資源循環・観光・健康・環境保全 を包含

  • デジタル技術とアライアンスで 小規模でも持続可能なビジネスモデル を構築

  • 林業×他産業 の掛け算が、地方創生と脱炭素社会のキードライバーに

21世紀の林業は、“伐る”だけではなく 「森をデザインし、多様な価値を収穫する産業」 へと変貌しています。森の可能性に挑戦するプレーヤーこそ、これからのグリーンエコノミーを牽引する存在なのです。

 

 

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